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理容室(1)

シャンプーを終え、軽くドライヤーが当てられる。
鏡に映る、いつもとは少し違う自分に少し恥ずかしさを覚えるが、何とも気が引き締まる。

「じゃあ、独身なんですか」
作業しながら理容師との会話は続く。
「そうですね、中々そういうことは」
「別に結婚が嫌って訳でもないんでしょう、今までチャンス無かったんですか」
「はは…そうですね、あれば良かったんですけど」
適度にはぐらかすも、この手の話は苦手だ。
常套句となりつつある返答をし、苦笑いを浮かべる。

やがて肩へのマッサージが始まる。
首元に当てられた親指が、ゆっくりと肩先へと移動する。
グイっと力が入り、力強く押し付けられる度に、微妙に身体が動く。
「大丈夫ですか?」
鏡越しに理容師と目が合う。
「あ、はい…、身体触られるとつい…」
照れながら鏡越しに答える。
「そう言えば、いつもちょっと強張ってましたね、くすぐったいですか?」
「えぇ、まぁ」
「じゃあ、これは?」
そう言いながら、肩から首筋に掛けて指を這わせ、反応を見る。
「あっ」
首筋から徐々に上がってきた手が、アゴの下を這った時にビクンと身体がのけぞる。
「ははっ、ここは一番弱そうですね」
そう言いながら、返す手でアゴ下を撫でた。
「っっぅ」
またビクンと身体が硬直し、恥ずかしさが高まる。
「すいません、ちょっとやり過ぎましたね、代わりに他のところにしましょう」
そう言うと、首筋を這った手が鎖骨の辺りへと移動する。

1人ドキドキする気持ちを押さえながら鏡を見ると、顔を上げた理容師と目が合った。
心を見透かされまいと思ったのか、慌てて目を逸らす。
今もまだ理容師は鏡越しに反応を見ているのだろうか。
そう思っていると、理容師の手が動いた。

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