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ビジネスホテル(1)

こんな大雪に見舞われたのは、とんだ災難だ。
たった10分程歩いたばかりと言うのに、身体にも荷物にも積もる雪で身体の感覚は無い。
それでなくても雪で動かない渋滞を、スリップしたトラックが一層状況を悪化させた。

このまま乗車していても時間の無駄だと運転手から言われ、歩いてホテルを探す。
新幹線は諦めていたが、まさかこの雪の中、歩いてホテルへ向かうハメになるとは。

運転手が手配してくれた、歩いてすぐのホテルが確保出来たのは不幸中の幸いだろうか。
そうこうしていると、ようやくホテルが見えた。

ホテルと言っても、なんてことはない、少し古ばんだビジネスホテルだ。
この天候、今の置かれた立場を考えると不満は無いが、普段なら絶対に利用しないだろう。
身体中に積もった雪を払い、入口を通った。

「いらっしゃいませ」
受付にいた2人のスタッフが丁寧に声を掛けた。

「すみません、こんなに濡れてしまって」
粗方の雪は落として入ったが、体温で解けた雪が服や荷物に大きく染み入っている。

「大丈夫ですよ、すぐにお部屋へご案内致します」
若いスタッフがそう言うと、手早く手続きを済ませ、カードキーを渡す。
そのまま年配のスタッフの案内でエレベーターへと向かい、1人で部屋へと入った。

普段なら決してこんなことはないのだろうが、予め部屋には暖房がついてあった。
ホテル側の対応に有難さを覚えつつ、荷物を置くと、すぐに着ていた服を脱いだ。

コートもジャケットも、まるでシャワーを浴びたかの様な程に濡れていた。
傘を差しても意味が無い程に荒れた天気だったため、致し方ないのかもしれない。
風邪をひく前に、早く風呂に入らなくては、そう思い、張り付いたスラックスを脱いだ。

へばりついたYシャツも脱ごうとしたその時、コンコンコンコンっとドアを叩く音がした。

誰だろうと思いつつ、ドアを少しだけ開けると、受付にいたスタッフだった。

「お邪魔かとも思ったのですが、お手伝い出来ることがあればと思いまして」
そう言いながら、軽く頭を下げた姿に、先程の暖房の件を思い出す。

「あぁ、ありがとうございます、暖房までつけていただいて」
そう言い、ドアを開けると、スタッフを部屋の中へ通した。

「暖房助かりました、お陰で凍えずに済みました、今からシャワーでも浴びようかと」
そう言い、はたと自分の服装に気が付いた。

黒いボクサーパンツに張り付いたYシャツがなまめかしい。
少し恥ずかしさを覚えたが、逆に恥ずかしがる方が不自然だろうと気にも留めなかった。

「これはお邪魔でしたね、失礼致しました」
だが、少し目のやり場に困った様に頭を下げた時の、胸や股間への視線には気づかなかった。












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