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タクシー(2)

「いや、起きてください、お金払ってください」
「んん…ポケットに財布…」
酔いの中、答えた学生がポケットにある財布に手を伸ばすが、また眠ってしまった。
無断で財布から抜く訳にもいかない。
普段なら、どうしても起きない場合は交番に駆け込むが、今回は違う。
メーターの休憩ボタンを押してから、もう一度、客を起こす。
「着きましたよ」
「んん…」
「さ、行きますよ」
身体を強引に引っ張り、車外へと出した。
鍵を閉めた後、客の体を支え、家まで送る。
元々、1人で歩ける状態には無いため、後で何かあっても言い訳はつく。
入口まで位、少し楽しませて貰ってもバチは当たらないだろう、と軽い気持ちだった。

客の腕を肩に担ぎ、腰へと手を回す。
決して楽ではないが、アルコールに交じった体臭を思うと、苦では無かった。
密着した筋肉を肌で感じつつ、興奮で股間に熱が集まるのを感じる。
はぁ、たまらん。
1人、心の中で呟きながら、弾力と匂いを味わった。
エレベーターが無い分、大変さはあったが、反応が増えた客のお陰で、部屋前まで来た。
「着きましたよ」
「ん…カギ…」
「カギどこですか?」
「…ポケット…」
当然の答えが返ってきた。
「出してください」
「んん…」
スマホと財布はバックポケットに入っている、恐らく前ポケットにあるのだろう。
「…失礼しますよ」
そういって、客の腕を持っていた左手を離し、左側のポケットに入れる。
何もない、丹念に手で探ると、逞しい脚の弾力と、右側にムニュっとした温もりを感じる。
探しているフリをして、少しそれらの弾力を楽しんだが、さすがに体力の限界も近い。
手を抜き、もう一度担ぎ直すと、今度は腰に回した右手を右側のポケットに突っ込んだ。
手の先に金属の感触を感じ、カギを取り出す。
「開けますね」
カギを差し込み、ドアを開ける。

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