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陸橋(6)

吐き出した欲望に男の身体が反応し、さらに搾り取る。
そんなサイクルを繰り返し、完全に搾り取られた頃には、男の身体に身を預けていた。
互いに熱くなった身体は汗の匂いが混じり、1つになれた気がした。

そんな余韻も束の間。
ここは陸橋だ。
遅い時間とは言え、いつ誰がくるやもしれない。

欲望を吐き出したせいか、一気に熱も冷め、冷静さを取り戻す。
しかし、先程迄凛々しく勃起していたそれは萎えてもまだ男の中にあった。
そして互いの体温を感じているのは心地よい。

まるで冬の寒い日に布団から出るのが億劫になる朝を思い出した。
後ろ髪を引かれながらも、男の中からそれを引き抜き、落としていた服を纏う。
手すりに身を預けていた男にも服を渡し、着るのを待った。
軽く会話でも交わすべきなのか迷っていると、男は服を着終え、踏み出した。
「じゃ…」

取り立てた会話もないまま、背を向けた男に少し寂しさを感じる。
しかし、離れていく男の中には自らの欲望が注がれていることが卑猥に感じる。

少し下半身に疼きを感じ、その場を後にした。

シャワーを浴びながら改めて興奮を思い返すも、その大胆さに焦りもある。
だがまたあの感覚が味わってみたい。
次はここに連れて来て、落ち着いて味わいたくもある。

そんなことを思いながら、自らの手でもう一発欲望を吐き出した。

*****

あれから何日か過ぎ、仕事終わりに陸橋を渡る度に股間が疼く。
しかし、帰宅時間が早くもあり、男に出くわすこともない。
たまに夜中にベランダへ出て下を見るが、それらしい気配もない。

しかし陸橋へと足を踏み入れる時の胸の高鳴りは、一向に消えはしなかった。

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