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配達員(1)

いまや日課にもなった自分へのご褒美。
新商品が出る度にネット注文し、その到着を今か今かと待つ。
心待ちにしているのは、新商品の到着、それだけじゃなかった。

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ピンポーン。

ガチャリと開けたドアの向こうには、見慣れた顔。
配達員のおじさんは、いつの注文でも変わらずにこの人だ。
「すいません、お待たせして」
50代後半位の風貌だが、日頃の配達業務もあり、小柄ながら締まった印象。
自分よりも背の低い熟年好きな俺から見れば、新商品よりも毎日お世話になっている。
「いえ、大丈夫ですよ」
「あ、ハンコですよね」
明日位に届くと思っていたが、思ったより早く来たんだなとハンコを探しに行く。
「いいですよ、急がなくて」
確かにここに置いたんだけど、いつもの引き出しを探す。
待たせているという罪悪感の中、なんとかハンコを見つけ配達員のおじさんの元へ行った。

「いつも大変だねぇ」
「すいません、すぐに忘れてしまって」
いつもと変わらない笑顔に癒されつつ、ペコリと頭を下げる。
「いやいや、若いって大変だなぁって」
「??」
普段とは違う返事に少し戸惑った、いつもなら、大丈夫だよ、と笑顔で応えるからだ。
「若い?若年性の痴呆とかですかね」
「いや、そっちじゃなくて、こっち」
そう言いながら、手に持った宅配の荷物を軽く持ち上げる。
「新しいの出る度に注文してんでしょ?」
「!!!!?」
バレてる!?心の中の衝撃は確実に顔に出ていただろう、隠す余裕も無かった。
「え?な、何がですか…」
かろうじて出た精一杯の誤魔化し。
「大丈夫だよ、オレもここ良く使うから」
配達員のおじさんは笑顔でそう答えた。

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